<金口木舌>家具屋のお家騒動


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 経済部に来たばかりのころ、事業承継セミナーへの参加者の多さが不思議だった。ほとんどが創業者の息子たち。といっても20、30代の若手ばかりではない。既に社長になってもおかしくない50代の二代目もいる

▼復帰前後に創業した企業の世代交代の時期だった。県内企業の9割は同族経営。子どもに譲るのが常道とはいえ、実は代替わりはそう簡単ではない。創業者が離れない社もあったし、事業自体が岐路に立たされた社もあった
▼経営コンサルタントの経験もある実娘に跡を譲ったこの会社は事業承継の成功例のはずだったのだが。大塚家具の創業者の父(71)と長女の社長(47)が対立している。株主総会に向け委任状争奪戦も始まった
▼記者会見で父は「悪い子どもをつくった」と嘆き、娘は「創業者から離れるべき限界の地点」と切り捨てた。母親や兄妹も父娘の陣営に分かれたというから、よその家庭のことながら寒々しい気持ちになる
▼会社を伸ばした会員制の高級路線を貫きたい父、低価格で入りやすい店への改革を目指した娘。どちらの方向性も分かるが、家族一致して経営に当たる道はなかったのか
▼同族経営のメリットは信頼性と安定性だという。お家騒動でどちらもぐらつき、被害は社員や株主に及ぶ。家具は家族だんらんのためにあるはずだ。食卓やソファで親子の話し合いは持てないものか。