<金口木舌>避難者という言葉


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 東日本大震災を機に東北地方などから県内に移り住んだ人たちでつくる団体が幾つかある。取材で出会った関係者からこんな話を聞いた。「沖縄に住んで3、4年がたち、定着しているので『避難者』と呼ばれると違和感を抱く人もいる」

▼「避難者」の呼称は、県が実施する住宅借り上げ支援や買い物などで割引を受けられる「ニライカード」などの対象者にも使われる。震災直後は市役所などでも「避難者の方」と呼び出す声を耳にした
▼「避難者」だけでなく「支援者」という言葉もよく聞く。「援助してあげる人」と「援助を受ける人」。無意識のうちに、そんな上下関係に陥る可能性にも思いをはせたい
▼県が昨年11月、災害救助法が適用された岩手、宮城、福島など6県から沖縄に移住した世帯を調査したところ、3年以上暮らす世帯は64%に上った。沖縄に定着し、生活の場になりつつあることがうかがえる
▼県によると、震災を機に移り住んできた人は2月現在で823人。その中には安全な食材を使った菓子店を営む人や、ぬか漬けの普及に努めている人も。子育て支援に携わる女性もいる
▼それぞれが沖縄に新風を吹き込んでいる。移り住んだ人たちに刺激を受けたり、支えられたりすることもある。大切なのは「お互いさま」の気持ち。その思いがあれば、つながりはさらに深まる。