<金口木舌>地域の生年合同祝賀会


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 復興もままならぬ貧しさの中、地域が育んできた催しだという。うるま市の平良川公民館で開かれた生年合同祝賀会はことし57回を数えた。85歳と73歳の年男年女を家族と共に地域が祝福する。その光景に地域の良さを見る思いがした

▼1956年から始まった冠婚葬祭の簡素化を図る新生活運動の一環として定着した。比嘉盛一自治会長は「戦後の何もない中、助け合いの心で始まった」と言う。住民が費用を工面して祝福し、長寿にあやかる。暮らしの知恵と工夫がそこにはある
▼9人の主賓の一人、85歳の下地貞子さんは現宮古島市から移り住んで約40年。家族に囲まれ「うれしいですね」としみじみ。「こちらが長男、こちらが次女…」。家族を紹介する言葉に喜びがにじんだ
▼石川友吉さんも旧石川市から移って約50年。「隣近所とも話が弾むし、いい地域ですよ」。85歳を迎えた心境を「普段通り」と、すっかりなじんだ地域の人たちと喜びを分かち合う
▼かつては各区で開かれた合同生年祝いも、今は旧具志川市では平良川だけとなった。「健康面もあろうが、参加できない人が増えてきた」。そう話す比嘉自治会長の表情は寂しげだった
▼合同生年祝いの減少は地域の共同体意識が薄れていることも一因だろう。いかにして住民に一体感を持ってもらうか。ここは新たな知恵と工夫が求められる時である。