<金口木舌>色を追いかける


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 予想外の事態に驚き、顔色が青くなることを「色を失う」と言う。しまくとぅばにも「いるぬぎゆん」という言い回しがある。動揺は顔に出る。苦悩を背負う街はどうだろうか

 ▼もうすぐ4千回を迎える本紙の4こま漫画「がじゅまるファミリー」は2011年3月13日、色を失った。東日本大震災を伝えるテレビの前でぼうぜんとする家族を黒の描線だけで3こま描いている
 ▼あらためて当時の紙面をめくってみた。大津波が襲い、壊滅した街は全体が土色に覆われている。多くの人命を奪った大地震は鮮やかな色を街から消し去ってしまった。紙面自体も泥を浴びたかのような錯覚を覚える
 ▼色が戻った漫画の中で、家族はトートーメーに手を合わせ、義援金集めに知恵を凝らす。「ぼくたちにできることはないかな」「模合仲間で何かできないか」という吹き出しの文字に込めた思いを、多くの県民は共有したであろう
 ▼震災から4年を迎えた。季節は巡り、被災地は少しずつ彩りを取り戻しつつある。まだまだ困難が伴う復興への歩みをこれからも見守り、支えよう。被災地を離れ、沖縄で暮らす人々との対話を重ねよう
 ▼「色を失う」には、平安時代にはやった蹴鞠(けまり)で「蹴り上げた鞠が風に流される」という意味も含んでいる。手を携えて、色を追い掛けよう。被災地と私たちをつなぐ幸福が見つかるはずだ。