<金口木舌>巣立ち後も心に宿る絵本


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 「スマホに子守りをさせないで!」と呼び掛けるポスターにどきっとさせられた。配布した日本小児科医会は警告する。スマートフォンなど電子メディアに長時間触れている子どもは、運動や睡眠が不足し、対話能力も低下して心身の発達に影響が出ると

 ▼同会は、子どもへの語り掛けや絵本の読み聞かせを親に勧める。乳幼児期の十分なスキンシップと語り掛けは、親子の絆を深め、言葉の発達を育てるといわれている
 ▼「子守唄なんて、うたったってしかたないです、あかん坊だもの」と地方の若い母親が言うと、都会の母親は「私がうたうと近所の人が笑うんです」と言う。児童文学作家の松谷みよ子さんが絵本「あかちゃんのうた」のあとがきにつづっている
 ▼松谷さんは「あかん坊だもん、わかりゃしない…。その合理性の浅さ。こわいことです」と嘆く。その松谷さんが2月28日に他界した
 ▼赤ちゃん向けの作品のほか「龍の子太郎」や「ちいさいモモちゃん」シリーズでも知られる。戦争を体験し原爆関連の作品を刊行。人生の辛苦も描き、題材の幅広さも魅力だった
 ▼「絵本は建物ににていると思う」という言葉を残し、巣立っても心の中で家のように宿る絵本づくりを目指した。松谷さんは遊べる空間や潜り込める片隅、温かい場所のある家を連想する。松谷さんから託されたバトンを子どもたちにつなげたい。