背負ってきた境遇の重さに、思いを重ねたのだろう。児童養護施設・美さと児童園(沖縄市)の壮行会に参加した多くの人がもらい泣きした
▼園には虐待や育児放棄、親の病気などさまざまな事情で、親と別れて暮らさざるを得ない子どもたちがいる。ことしも18歳となった7人が関係者の励ましを受けて園を巣立った
▼「こんな場所はイヤだと部屋を飛び出した日々」。AさんとRさんはつらい生い立ちにめげそうになった思いを自作の歌詞に込め、歌った。「名もない花」と題したオリジナル曲にはこんな言葉もある。「生まれた意味をさがしては/部屋の隅で泣き崩れた」
▼施設を抜け出し、反抗し、荒れた生活を送った人もいる。父母の愛に恵まれず、過酷な境遇に負けそうになったこともあったろう。それでも園生は人間的にも成長し、旅立ちの言葉で多くの人に感謝した
▼仲間同士で励まし合い「私には大切な友人がたくさん増えた」。父母と会えぬ悲しみを抱きつつ「私を産んでくれた母に感謝している」。悲しみも喜びも、同じ年頃の人より何倍も体験したからだろう。その言葉は心に染みた
▼Aさんたちの歌詞を借りてエールを送りたい。「あふれた大きな涙/いくつも頬を伝った/でもそのたびに強くなれた/だからきっとあなたは大丈夫」。進学、就職と羽ばたく君たちを、たくさんの絆が支えるだろう。