<金口木舌>ラジオが消えた時代


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 ラジオの長寿番組「全国こども電話相談室」が29日、50年の歴史に幕を下ろす。インターネット検索が子どもにまで広がり、時代の波には勝てなかった

 ▼ことしは日本でラジオ放送が始まって90年。1925(大正14)年3月22日、NHKの前身・東京放送局が電波を発した。遅れること16年、沖縄では41年12月8日朝、ラジオから第一声が響いた。日米開戦を告げる大本営発表だった
 ▼沖縄放送局は45年3月23日に米軍の上陸前空襲で破壊され、3日後に閉鎖に至る。戦争と共に生まれ、戦争で消えたメディアだった。8月15日の玉音放送も大多数の県民が聞いていない
 ▼戦後は49年に米軍政府が設置した「AKAR琉球の声」でラジオが復活した。琉大財団への移管を経て初の民間放送・琉球放送が誕生する。極東放送(現FM沖縄)、ラジオ沖縄も相次ぎ開局した。米統治下で英語・中国語放送を行ったり、NHKの教育番組や紅白歌合戦をCM付きで放送したりと、3局は独自の歴史を歩んできた
 ▼今も沖縄のラジオは元気がいい。個性豊かなパーソナリティーを抱え、地域に密着し、聴く側との垣根も低い。県民のラジオ好きは全国一の聴取習慣率が物語る
 ▼70年前の今ごろ、沖縄からラジオが消えた。沈黙は4年に及んだ。にぎやかな音が聞ける当たり前の幸せをかみしめつつ、時代の変化にも耳を澄ませたい。