<金口木舌>世界を救う技術か?


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 県外の知人に「沖縄のうまいものは」と聞かれるたび薦めるのがイカスミ汁。コクのある独特な味が好評だ。「おいしい」と開けた口が真っ黒なのもいい話題のタネになる

▼他の地域で食されていないのが不思議だ。逆に県外ではこれも食材か、と驚く物もある。国外に目を向けるとなおさらだ。27日付29面の「テラピア不妊化成功」の記事で、養殖では世界第2位の生産量があると知り目を見張った
▼アフリカ原産で沖縄には台湾から持ち込まれた。低水温に弱いが繁殖力が強く、暖かい沖縄では全域で繁殖した。「イズミダイ」という名で売り出されたこともあるようだが、調理の際、臭みを抜く必要があったことなどから食用として定着しなかった
▼テラピアの不妊化は沖縄美ら島財団などの研究グループが成功させた。不妊化した雌は通常より大きく成長し肉付きも良くなるため、海外では養殖への貢献が期待される
▼乱獲による魚類資源の減少は世界的な問題だ。不妊化に薬品は使わないため、食の安全面でもメリットがある。より商品価値のある養殖魚とする技術として注目度も高いという
▼一方、食用になっていない日本では河川の在来種を脅かし生態系を崩す「帰化動物」にすぎない。テラピアの不妊化はこの問題の解決にも役立つ可能性があるという。沖縄発の技術があらゆる面で世界を救うかもしれない。