<金口木舌>「天使の声」が生きやすい社会


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 ことしのグラミー賞で、22歳の新人ながら4冠を獲得した英国の歌手、サム・スミス。大柄な体から生み出される美しい高音が「天使の声」と称される

▼最新曲のミュージック・ビデオではスミス自身が結婚式を挙げ、家族や友人に祝福される場面が描かれている。彼が手をつなぐ相手は男性のパートナーだ
▼同性愛であることを公表し、片思いの彼に向けて曲を作った。グラミー賞のスピーチで「去年、僕を失恋させてくれた男性に感謝する。おかげでグラミーを四つも頂いちゃったよ」と語り、大歓声を受けた
▼同性愛を公言できる人はまだ少数派だろう。好奇の目にさらされ、いじめの対象になるのを恐れ、沈黙を守る人も少なくない。同性カップルにも困難が立ちはだかる。偏見から住居を借りられず、入院時にパートナーが家族でないことを理由に病院から面会を断られることがあるという
▼渋谷区の決断は突破口になるのか。同性カップルを結婚に相当する関係と認めて「パートナーシップ証明書」を発行するという、全国初の条例案が区議会の賛成多数で可決・成立した
▼法的拘束力はないものの、行政の“お墨付き”を得られたことの意味は大きい。ただ、お上が認めただけでは効力を発揮し得ないだろう。私たち一人一人が多様性を認め、尊重する意識を持ちたい。さまざまな差別や偏見は私たちの心の内にある。