<金口木舌>思いに寄り添う


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 参加者はさまざまな思いで海を見詰めていた。3月21日、名護市瀬嵩の浜で行われた新基地建設に反対する県民集会。愛する海や親しんだ風景が失われることを悲しむ素直な思いに胸を打たれた

▼瀬嵩出身の女性は浮具(フロート)で囲われた海を見るのがつらく、涙を流した。辺野古の女性は息子の釣り場を守りたかった。基地前での座り込みにも参加していることを、子どもたちから感謝されたその女性は目元を拭った
▼一週間働いた疲れを癒やしたいだろう週末。那覇から車で2時間以上かかる会場だ。自分の時間を犠牲にしてまで基地を造らせたくないと、会場に足を運ぶ県民には頭が下がる
▼自民党県連会長の島尻安伊子参院議員が4日、「反対運動は責任ない市民運動だ」と発言した。責任がなければ声を上げていけないと考えるなら言論の自由をはき違えている。県民の思いを「反対運動」とひとくくりにするのも乱暴だ
▼島尻氏は県選出の国会議員で沖縄の自民党の「代表」でもある。その立場の国会議員が新基地を造らせたくないという県民の思いに対抗すると宣言した。公約を信じて投票した人はどう思うだろう
▼菅義偉官房長官は翁長雄志知事から県民の思いを直接聞き、何を感じ、何を官邸に持ち帰るのか。6日から「春の新聞週間」。県民の思いに寄り添う報道を心掛けようとあらためて誓う。