<金口木舌>自然一つ一つが教材に


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「都会と比べ友達は少ないけど、一人一人が主役だよ」。国頭村立安田小学校の入学式。児童代表の菊田美音(みね)さん(5年)が唯一の新1年生、仲村幸之芯(こうのしん)君に語り掛けた

 ▼安田小は区内の教職員住宅を提供する山村留学を行っており、仲村君と姉想子(ここ)さん(6年)も山村留学生。菊田さんは仲村君にヤンバルクイナなど生き物との出合いの楽しさを紹介するなど、その言葉に地域への愛着の強さを感じた
 ▼豊かな自然は観光資源として高い価値を持つだけではない。児童にとって自然は友達であり、先生のような存在でもある。小鳥のさえずりや山、川などの自然一つ一つが教科書だけでは学べない教材になる
 ▼その安田区にあるクイナ保護施設で先日、画期的な出来事があった。飼育下で生まれたクイナの成鳥が自然繁殖し、3羽のヒナが生まれた(11日付1面)。飼育下での第2世代誕生はクイナでは初のこと
 ▼環境省やんばる自然保護官事務所が血縁関係に基づく相性や繁殖行動などの研究を続け、より自然界に近い生育環境に腐心した成果だ。加えて自然保全活動や輪禍防止、マングース駆除など日ごろの地域住民の協力と理解が研究を支えた
 ▼安田区はクイナとの共生を「郷(さと)づくり」の基本に据える。自然を生かした施策は言うほど容易ではないが、取り組む意義はある。子どもたちに好影響を与えることを確信した。