<金口木舌>言葉の大切さと重み


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 言葉を扱う仕事柄か、日常でも一言一言を意識し、適切な表現にしようと心掛けている。言葉は時として刃のように胸に突き刺さり、肉体的な暴力以上のダメージを与える場合もあるからだ

▼「腐れナイチャー」「出て行け、犯罪者」。名護市辺野古の海上で、新基地建設に反対する市民に対して海上保安官が浴びせた言葉だ。圧倒的な権力を持つ者からの軽蔑と言える発言だろう
▼「腐れナイチャー」発言の際は海上で取材中だった。その瞬間、衝撃を受け、耳を疑った。隣で動画撮影をしていた本紙カメラマンとも自然に目が合い「聞いた?」と無言の合図でうなずき合った
▼新基地をめぐる闘争の中では、市民の側からも時折、厳しい抗議の声が上がる。しかしこれは平和を守りたい心の奥底の叫びだ。権力を持つ側が使う場合とは意味合いが異なる
▼一方で、市民らの言葉に耳を傾ける海上保安官もいるようだ。海上行動で拘束された際、市民が「沖縄の民意を理解してほしい」「戦後70年にわたる沖縄の負担を考えて」などと訴えると、心苦しそうに目を伏せる姿があるという
▼組織化されると個人の感情も殺されてしまう。そんな国家権力の危うさが今、辺野古の現場で見られる。19日は辺野古漁港で座り込みを始めて11年を迎える。真っ青な大浦湾は対峙(たいじ)の日々ではなく、笑顔が行き交う沖縄の「夏」を待っている。