<金口木舌>前向きなドラマを


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 とにかく早く記事を書き終えたい。仕事を片付け、すぐにでも場の雰囲気を味わいたい。取材のたびにそういう思いに駆られたのが全日本トライアスロン宮古島大会だ

 ▼疲れた様子ながらも充実した笑顔を浮かべ、あるいは涙を拭いながらゴールする選手、支える家族や友人。何よりも島全体で選手の偉業をたたえているような会場の雰囲気。一人一人にドラマを感じ、取材のたびに涙を抑えられなかった
 ▼悪天候でスイムが中止になったのは残念だが、伊良部大橋が開通し伊良部島がコースに加わった初の大会になった。大橋の開通を喜ぶ島民の思いも含めたドラマが彩りを添えた。歴史に残る大会を取材できた記者がうらやましい
 ▼人の強さや優しさ、善意。宮古島大会はありとあらゆる前向きな感情が爆発するイベントともいえる。ただ日々の生活の中にも勇気や希望、元気を与えてくれる人や場面の話題はある
 ▼13日付25面で中度の知的障がいのある男性が21回目の試験で運転免許証を取得したことを報じた。17日付29面では314グラムの超低体重で生まれた男児が元気になったニュースも。いずれも当事者の強い思いや周囲の支えが胸を打つ
 ▼インターネットでは心ない中傷や攻撃的な言葉が飛び交う。そういう時代だからこそ、人間の素晴らしさや可能性を感じさせる話題を提供できるメディアでありたい。