<金口木舌>ツーショットの価値


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 握手を交わす2国首脳の写真にしばし見入った。激しい対立を続けてきた両国だけに感嘆の声も上がろう。オバマ米大統領とキューバのカストロ国家評議会議長である

 ▼実はこの2人、2013年12月のネルソン・マンデラ南アフリカ元大統領の追悼式でも握手をしている。もちろん59年ぶりの首脳会談とあって注目度は違う。ことしを代表するツーショットとなろう
 ▼両国の断絶を象徴する写真がある。1961年4月、キューバ問題で会談に臨むケネディ米大統領とアイゼンハワー元大統領を背後から撮った「孤独な2人」という題名の一枚である。撮影したのはAP通信のカメラマン、ポール・バシス
 ▼革命に成功し、米国と断交したキューバへの対応に苦悩する若き大統領と老政治家の後ろ姿は両国の対立の深刻さを物語る。時代の証言たるツーショットはピュリツァー賞を取った
 ▼この2人の写真も歴史の証言には違いない。翁長知事と安倍首相の初会談である。「新基地は絶対に造らせない」という知事の決意が際立った。握手を通じて、わずかでも民意が伝わったか、どうか
 ▼安倍首相とオバマ大統領の会談が28日にある。両国の蜜月を演出するだけなら県民はそっぽを向く。知事の注文通り、新基地に反対する沖縄の声を伝え、大統領と交渉すべきだ。見慣れたツーショットの価値も大いに増すだろう。