<金口木舌>「昭和」に学ぶ


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 宜野湾海浜公園に集まった県民が抗議の「がってぃんならん」を五唱した日、東京では安倍首相らが「天皇陛下万歳」を三唱した。2年前の4月28日、沖縄を質草のようにあしらってきた国の素性を見た

 ▼「万歳」は予想していなかったと菅官房長官は説明したが、講和条約によって沖縄が分断された「屈辱の日」に主権回復式典を開く政府の独善を象徴していよう。普天間問題でみせる安倍政権の仕打ちと同質のものだ
 ▼県民を嘆かせた万歳は過去にもあった。1972年5月15日、東京で開かれた復帰記念式典で佐藤栄作首相が叫んだ「天皇陛下万歳」である。首相が発案者だった
 ▼後年、大岡昇平は「故佐藤首相、武道館の祝賀式典にて、『沖縄万歳』ではなく、『天皇陛下万歳』を唱(とな)う。呆れた国なり」と評した。戦争と国家を問い続けた作家の寸鉄である。「沖縄万歳」でも異論は出よう
 ▼講和条約発効から5日後、皇居前で開かれた「独立回復」を祝う記念式典でも「日本国万歳」が響き渡った。分断された沖縄や奄美、小笠原の苦悩に思いをはせた参加者はどれほどいただろうか
 ▼9度目の「昭和の日」を迎えた。沖縄をらち外に置き、万歳を唱える昭和の悪弊を安倍首相は引き継ぐ。分断と差別の歴史に学ぶべきだ。手始めに、2年前の「がってぃんならん」の異議申し立てを思い出してもらいたい。