<金口木舌>通説とは違う歴史


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 4月10日の小欄で、沖縄の女性参政権は沖縄諮詢会の委員から米軍政府に提案したと紹介したところ、複数の方から事実誤認との指摘を頂いた

 ▼確かに一部の書籍には、委員の過半数が反対したため米軍が命令したと書かれている。だが公式の「沖縄県史料 沖縄諮詢会記録」によると「賛成11人、不賛成1人」が事実だ
 ▼1987年発行の当山正喜著「政治の舞台裏」には、諮詢会幹事の松岡政保氏の証言がある。45年9月2日、北部の収容所を視察した際、米軍のマードック政治担当将校に松岡氏が「女にも参政権を与えたらどうか。日本もまねるはずだ」と提案した。将校も「グッドアイデアだ」と賛成した-とある
 ▼松岡氏の次男・啓氏に話を伺うと「おやじが米軍に進言したと直接聞いた」と明言する。実際、3日後の会議で軍政府側が女性参政権の議論を促したと公式記録は記す
 ▼政治担当将校ワトキンス氏も文書を残している。「女性参政権の提案は、諮詢会が始まりといわれている。女性の権利とは全く関係なく、戦争で男が激減したためだ」(「沖縄戦後初期占領資料87巻」)
 ▼彼は参照として「45年9月14日付の軍政府ニュースリリース」を挙げている。投票6日前の決定的文書だが、筆者はまだ県公文書館で探し出せていない。通説とされる歴史も、1次資料をひもとけば、違う顔が見えてくることもある。