<金口木舌>沖縄の思い世界へ


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 「今年(くとぅし)しむ月(ちち)や 戦場(いくさば)ぬ止(とぅどぅ)み 沖縄(うちなー)ぬ思(うむ)い 世界(しけ)に語(かた)ら」-。反戦平和の大衆運動を引っ張った有銘政夫さんが名護市辺野古で詠んだ琉歌だ。その琉歌の一節が表題の映画「戦場ぬ止み」を見た

 ▼新基地反対運動を中心に基地と折り合い、生きざるを得なかった地域の人々の暮らしも描く。警官や海上保安官に市民が排除される場面の一方、歌やユーモアを忘れない人々の姿が笑いを誘う
 ▼まさに辺野古の今を映し出す映画の監督は「標的の村」の三上智恵さん。本土のスタッフが「翁長雄志知事誕生になぜ県民があれほど喜んだのか分かった」と述べたという。「それだけでも作った意味があった」と三上さんは表情をほころばせる
 ▼有銘さんの琉歌のように辺野古の新基地建設作業にとどめを刺したかに見えた知事選の数日後。作業を再開する政府に理不尽さを感じる人は多いだろう。再開後もくじけず、ありとあらゆる表現で非暴力の抗議を展開する市民らの姿に心打たれる人はいるはずだ
 ▼映画監督の宮崎駿さんが「辺野古基金」の共同代表になるなど、全国の関心も高まりつつある。政府の強硬姿勢を抑制するきっかけにもなるだろう
 ▼映画は全国で公開される。「悲観論者」と自身を評する三上監督だが「この映画で新基地建設を止められるのでは」と思うようになったという。今こそ沖縄の思いを「世界に語ら」。