<金口木舌>「沖縄君」への想像力


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 「沖縄君」という生徒がいる。周りが嫌がるトイレ掃除を週5日担当する中、ある日、6日に増やすとの声が上がる。日数を減らすよう訴えるが、反発に遭う。理由は「座席がトイレに近いから文句を言うな」

▼もちろん架空の話である。作家の佐藤優さんが4月末、名護市辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前を初めて訪れ、座り込む市民と交流した。「百聞は一見にしかず」と「民意」を目の当たりにした感想を述べた後、冒頭の例え話を披露した
▼生きるための当然の権利を主張しているだけなのに、無視され続ける辺野古問題での沖縄と政府の関係になぞらえた。分かりやすい佐藤さん流の物言いに思わずうなずいた
▼同じく教室を例に、基本的人権について憲法の視点も交え紹介したのが田村理専修大教授(憲法学)著「憲法を使え!」だ。自身の娘が中学時代にいじめに遭ったことを記し、1章を割き「いじめ問題」と向き合った
▼いじめ自体は「軽微な被害」だったという。だが事実の隠蔽(いんぺい)など問題から目をそらそうとした教育現場を問題視。周りを理解せず、議論しようとしない「分断社会」の縮図だと危惧した
▼日常的に憲法を強く意識することは少ないが、個の尊重は子ども社会をはじめ、どこでも守られるべきものだ。相手の立場をどう理解するか。社会をつなげるために想像力をかき立てたい。