<金口木舌>逆ではないのか


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 梅雨入りの便りは来ないのに、台風6号が自動車並みの速さで沖縄の島々を一目散に駆け抜けた。順序が逆ではないか。気の早い台風の襲来に慌ててしまった

▼5月の台風接近は2011年以来4年ぶりで、1951年以降の統計をたどれば、今回を含めて24回となった。4月の台風接近も5回あり、いずれも梅雨入りに先んじている
▼紙面の台風進路予想図から目を離し、周囲の記事を拾う。逆ではないかと憤る出来事が目に付く。国の施策とあらば本末転倒と言うべきか。とばっちりを食うのは県民、国民の方
▼与党が安保関連法案に正式合意した。14日には閣議決定し、国会提出の準備が整うことになる。これは不思議だ。既に安倍首相は法案成立を早々と米国に約束していた。これこそ順序が逆である
▼菅官房長官は「粛々」はやめても「唯一」と「理解」は手放さぬつもりのようだ。11日の会見でも、辺野古の新基地建設が危険性除去の「唯一の解決策」であり、「ご理解をいただけるよう取り組む」とぶった。これも逆だ。県民の常識に照らせば工事中止が先のはずだ
▼復帰から43年となる日を前にして思う。基地の重圧から脱し、人権を取り戻すために復帰を目指したはずだった。今、県民が直面しているのは日米同盟優先の不条理だ。逆ではなかったのか。拭い難い疑問を台風一過の空にぶつける。