<金口木舌>介護のコスト


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 「むかし恋愛、いま健康」が模合などで話題になる。肩が上がらない、目がかすむなどの症状から始まり、血圧や尿酸値の高さを自慢げに話す輩(やから)まで現れる。黄金週間で久しぶりに集まった仲間と会話を楽しんだ方も多かろう

▼心は出会ったころのままだが、時間は確実に進んでいる。最近、話題に「親の介護」が加わった。ある先輩は母親が認知症になり「おたくは誰」と問われたという。徘徊(はいかい)に悩まされる人もいた。明日はわが身だから、聞く方も考えさせられる
▼介護保険が4月から改定された。特別養護老人ホームなどの事業者報酬は平均単価を引き下げ、逆に訪問介護など自宅で介護する人への在宅支援には報酬を手厚くした
▼高齢者が地域で暮らし続けるための支援は歓迎だ。しかし自宅介護への社会の支援は十分とはいえない。認知症で徘徊中の90代男性が死亡した電車事故で、妻に賠償を命じた判決など家族の責任は重くなっている
▼家族の介護をする仲間のほとんどが施設を利用していた。そうしなければ働き続けられない。介護を理由に離職する人は年間約10万人もいて、その8割は女性だという
▼介護は高齢化する社会全体が負わなければならないコストだ。ただし総コストを減らす努力も働く世代の私たちには必要だ。いつまでも健康話で盛り上がれるほど健康でいたい。