<金口木舌>復帰すべき場所は


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 ウルトラマンの脚本家・金城哲夫は悩んでいた。故郷に引き揚げ、沖縄芝居の脚本を書いていたころだ。大和口(やまとぅぐち)でせりふを書き、翻訳することが「僕の心の中で大問題になって来た」「非常に苦しい」(劇団「潮」3周年パンフレット)

▼うちなーぐちを知ってはいるが達者ではない。おばあちゃんと孫が対話できないのは「日本の中央集権的言語教育が、方言ベッ視の悲劇を生んだと僕は言いたい」。方言が滅ぶのは「『心』が滅んでいくこと」と嘆いた
▼金城が存命ならさぞ驚いただろう。うちなーぐち話芸のプロを養成する学校が来月嘉手納に開校する。沖縄芝居も視野に入れるという。学校現場でも、那覇市は2年前、県も4月に小中学生向けの小冊子を配布した。日本語もしまくとぅばも両方話せる子が増えるといい
▼43年前のきょう、沖縄の施政権が返還された。本土に追い付けと、日本にばかり目が向いていたあの時代。しまくとぅばは抑圧された。その後、独自の文化を再評価することで沖縄は自信をつけてきた
▼ここ数年は自己決定権を求める動きとも相まって、しまくとぅば復興のうねりは強まっている。政府の圧政に対抗する中で、自らのよりどころを確かめる作業ともいえよう
▼沖縄が復帰すべき場所はどこなのか。青い鳥の話ではないが、それは日本ではなく、足元にこそあるのかもしれない。