<金口木舌>誇りと決意の「啖呵」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「なめたらいかんぜよ」は1982年の流行語になった。映画「鬼龍院花子の生涯」で、夏目雅子さん演じる主人公が夫の実家で「やくざの娘」とののしられ、きっとした瞳で振り返って啖呵(たんか)を切る

▼「啖呵」という言葉。一説には、元は「痰火」と書き、体内の火気によって生ずる病をいう。「切る」はその病を治すこと
▼痰火が治れば胸がすっきりすることから香具師(やし)などの隠語になった。仏教語で「相手の誤りを叱る」の意味の「弾呵(だんか)」に由来するとの説もある
▼「なめたらいかんぜよ」のセリフは宮尾登美子さんの原作にはない。宮尾さんは試写を見て驚き、反響にも困惑したようだが、映画化した作品の中で「一番出来が良かった」と振り返っている
▼最近、胸がすっきりした啖呵は17日の県民大会で翁長雄志知事が最後に発した「沖縄人(うちなーんちゅ) うしぇーてぇーないびらんどー(沖縄人をないがしろにしてはいけませんよ)」。相手を諭す言い回しながら、沖縄人としての誇りと決意があった
▼20日の日本記者クラブでの講演で知事は、米軍による軍用地の地代一括払いに抵抗した島ぐるみ闘争を挙げ「沖縄人は厳しい闘いで自治権を獲得してきた。本土のように与えられた自治権じゃない」と啖呵を切った。「保守政治家として子や孫を守る」ための啖呵。日米政府が辺野古新基地建設の誤りに気付くきっかけになるだろうか。