<金口木舌>「沖縄守備軍」ではない


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 英総選挙で躍進した政党SNPをどう訳すか。大半のメディアは「スコットランド民族党」だが、本紙は「-国民党」にした。SNPの独立運動が民族主義ではないとの立場からだ。呼称にはこだわりたい

▼沖縄戦の日本軍・第32軍はどうか。長い間、数多くの文献で「沖縄守備軍」と表記されてきたが、2012年刊行の「沖縄県史 沖縄戦日本軍史料」からは姿を消した。沖縄戦研究者でつくる部会で議論し、この用語は不適切で使わないと申し合わせた
▼当時の公的文書に「沖縄守備軍」という表記がないこと。それ以上に、第32軍が配備された目的、実態、結果が「守備」でなかったことは歴史が厳然と証明している
▼70年前のきょう、第32軍は首里から南部への撤退を決めた。住民10万人以上が避難する南部を戦場にしたことで、住民の犠牲が軍人を上回った。第32軍の最大の使命は本土決戦準備のため時間稼ぎをする「捨て石作戦」。県民の命や沖縄の土地を守る軍隊ではなかった
▼最新の沖縄戦研究を踏まえ、本紙でも3年前から「沖縄守備軍」を使わないようにしている。沖縄戦の本質を見誤らせる恐れがあり、真実を次世代に正しく伝えていくためだ
▼首相が自衛隊を堂々と「わが軍」と呼び、戦争法案を「平和」の美名で覆い隠すご時世。為政者の放つ飾られた言葉にも、一つ一つ目を光らせていきたい。