<金口木舌>戦争プロパガンダの法則


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 「われわれは戦争を望んでいるわけではない」。戦争プロパガンダの法則として、国家のリーダーが戦争直前に必ず言うせりふを英政治家のポンソンビーが紹介している。言葉と逆に戦争に突入したのは歴史が証明している

▼米大統領ルーズベルトも太平洋戦争開戦前に「われわれが戦争を望んでいないことは全国民はもちろん世界中の国々に知れ渡っている」と述べた。日本の東条英機も独首相ヒトラーも同じような言葉を吐いた
▼望みもしない戦争をなぜ始めてしまうのか。ポンソンビーは次の法則に、敵国が先に仕掛けたためやむを得ず戦争せざるを得なくなったとする説明を挙げる。現代に飛び交う排外的な言説に同じにおいを感じる
▼最近も似たような言葉を聞いた。「米国の戦争に巻き込まれるようなことは絶対にない。日本人の誰一人として戦争など望んでいない」。“戦争法案”を閣議決定した安倍晋三首相は14日の会見でそう言い放った。どれだけの国民が信用しただろう
▼こうも言う。「日本と世界の平和のため、国民とともに新たな時代を切り開いていく覚悟だ」。「平和」を多用するあたりも、過去のプロパガンダと奇妙なほど共通している
▼数の誇張、他国の残虐性、自国の高潔性-。ポンソンビーの法則に照らすと、この国は今また「戦争」への道を開こうとしているように思えてならない。