<金口木舌>変化を止める


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 最近、霊柩(れいきゅう)車を見ないと思ったら、昔とは形が変わったという。霊柩車といえばきらびやかな金色に彩られた派手な装飾が思い浮かぶ。だが最近は装飾のない黒色のステーションワゴンなどが主流のようだ

▼変わったといえば鉛筆の芯。わたしが小学生時代はHBが主流だったが、今はHBは禁じられ、より柔らかいBを使うよう学校側から指導されるという
▼Bが主流になったのは、HBでは字が薄過ぎて読めない子どももいるからということだった。インターネットで調べると、「子どもの筆圧が弱い」という報告や悩みを複数見掛ける
▼昔に比べて紙の質が良くなったことも要因に挙げられるだろう。だが手首をひねったり、力を入れたりという簡単な動作もできない子どもが増えているとの指摘もあり、気掛かりだ
▼沖縄歴史教育研究会などが実施した高校生を対象にしたアンケートで、ことし沖縄戦が終結して何年目か答えられる割合は54・7%だった。別の調査だが沖縄の復帰の年月日を答えられたのは12・4%にとどまった
▼霊柩車のように時代に伴う変化は必然だろうが、子どもの体力の低下は深刻だ。さらに沖縄戦や戦後、基地に起因する苦難の歴史は将来の沖縄、日本の方向性にも関わる継承しなければならない知識だ。鉛筆の芯のように変化に合わせるのではなく、変化自体を止める必要がある。