<金口木舌>しゃがめない子どもたち


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 立った姿勢からかかとを着けたまましゃがみ込む。この簡単な動作ができない子が増えている。各地の整形外科医の調査で1割前後いる(「運動器の10年」日本協会)。尻もちをつくか、かかとが浮くそうだ

▼前屈で指先が床に届かない、腕が完全に上がらないなど、2割弱の子が骨や筋肉、関節といった運動器に問題を抱える。最大の原因は運動不足だ。ゲーム機やスマホの使用時間が増え、外遊びが減っている
▼生活様式の変化を指摘する専門家もいる。一例が和式トイレの激減。しゃがまない生活で足首の関節が弱くなっているという。雑巾を絞れない子も増えてきた。ドアはノブからレバー式に、水道の蛇口はハンドルからレバーに、男性小便器の洗浄ボタンもセンサー式が増えた
▼弱者にも優しく、楽で便利になった半面、昔の子なら日常生活の中にあった多様な動作を習得する機会を失ってしまった。公園でも、ジャングルジムや回転遊具などが危険を理由に姿を消しつつある
▼子どもたちの異変に対応しようと、文部科学省は来年4月から学校の健康診断で運動器検診を義務付ける。昔に比べて体格は向上したものの、柔軟性や筋力バランスの崩れた子を早期発見する考えだ
▼指先しか使わないデジタル機器から離れ、全身を動かす外遊びで本来の運動能力を取り戻したい。10代の四十肩なんて笑えない。