<金口木舌>高校生のしびれる言葉


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 今日は芒種(ぼうしゅ)。ボースーベー(芒種南風)と呼ばれる南からの湿った風が吹き付けるスーマンボースー(小満芒種)特有の暑さの中、県高校総体がサッカーを残して全競技を終えた

▼取材現場で湿風に吹かれて思う。勝っても負けても「当たり前」はない。無心で臨む挑戦者、追われる重圧に苦しむ常勝者。1点、1秒、1センチを懸けてしのぎを削る。その裏に才能や途方もない努力があり、それらが生きるかどうかは本番の体調と気持ち。それとちょっとした運
▼女子テニスシングルスで優勝し、3連覇を達成した沖尚のリュー理沙マリー選手。重圧からプレーが乱れる不調と苦戦に耐えた。「ボールを打って返す、それに徹しただけ」
▼自転車個人ロードレース(60キロ)のゴール目前、好敵手に競り負けた八重山の新城銀二選手。最後に足がつったが言い訳はしない。「相手より弱かっただけ」。短い言葉と硬い顔の向こうに、無念と悔しさが見えた
▼翻って気持ちで勝った負けたの感覚はすこぶる鈍る大人の世事。失敗すれば言い訳を浮かべ、責任は自分だけじゃなくどこかにもあると自己救済。鋭く厳しく生き過ぎては生きづらい云々(うんぬん)。高校生の簡潔でしびれる言葉を前に、そんなご託を並べて苦笑する
▼カーチーベー(夏至南風)が吹けば梅雨が明ける。県総体を勝ち抜いた高校生の九州や全国総体の挑戦を追い掛けよう。