<金口木舌>アフターバーン


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 「どうしてオキナワはそこまで抵抗するのか」。米国や東京の取材で米政府関係者や県外の報道記者からよく投げられる問いだ。彼、彼女らの論理ではどうも沖縄の行動は了解しがたいらしい

▼その理解の一助となる映画がまた一つ完成した。ジャン・ユンカーマン監督の映画「沖縄 うりずんの雨」だ。1853年のペリー来航から米国と日本の間で翻弄(ほんろう)されてきた沖縄の近現代史をインタビューや記録映像でつづった。20日から桜坂劇場や東京の岩波ホールで上映される
▼映画の底流にあるのは沖縄戦からつながる県民の傷痕だ。映画の英語タイトル「アフターバーン」には、炎が消えた後もやけどが深くなっていくように沖縄戦犠牲者らの“トラウマ”は今も続いている、とのメッセージが込められているという
▼1995年の少女乱暴事件の加害者の米兵インタビューも収録している。加害者への接触は初かもしれないが、犯行態様まで語らせるあたりは議論の余地があるだろう
▼かつて元米政府関係者に、なぜ普天間基地の移設先が県内なのかと問うた時、彼は「今沖縄にあるからだ」と答えた。研究者の間でも普天間基地は何もない所に造られ、住民は後から周辺に住み着いたとする誤解が今もはびこる。表層だけからでは本質を見誤る
▼この映画を見た後でも同じ問いを口にするだろうか。ぜひ感想を聞いてみたい。