<金口木舌>長老が発する言葉


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 戦争を知る世代の危機感がひしひしと伝わる対談だった。9日、日本記者クラブで行われた対談に、自社さ連立政権で首相を務めた村山富市さん(91)と自民党リベラル派重鎮の河野洋平さん(78)が登壇した

▼2人は日本政府が歴史認識を示した二つの「談話」を出した。村山さんは戦後50年の節目の1995年、国策の誤りと植民地支配、侵略を認め「痛切な反省と心からのおわび」を述べた
▼河野さんは宮沢喜一内閣の官房長官だった93年「慰安婦」問題について旧日本軍の直接あるいは間接の関与を認め「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」と反省とおわびを示した
▼二つの談話は、その内容に否定的な安倍首相の下で、再び議論になる。首相が戦後70年談話で植民地支配と侵略を認めて「反省とおわび」を盛り込むか、日本の首相の歴史認識を世界が見守る
▼河野さんは「(安倍首相は)村山談話にはもともと反対だ。だけど国際情勢を無視することはできない。首相だから国民のために何がいいかを考えるべきだ」と述べた。沖縄についても「民意をどう見るべきか。日本の民主主義にとって非常に重要だ」と政権にくぎを刺した
▼「自分の国だけが特別だと思っている独善的な考えは間違いだ」と訴えた村山さん。国の姿を変える安保法制が国会で審議される中、長老が発する言葉は胸に重く響いた。