<金口木舌>闘う君の唄を


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 中学高校と、学校が苦手だった。違うどこかを夢見ながら、別の生き方があると考えたこともなく時間は過ぎた

▼県高校総体が終わって少し後、定時制通信制の夏季体育大会が始まった。全日制の中途退学や中高年の学び直しといった異なる背景の生徒たちが、大学進学や就職に向けた高校卒業資格取得のために学ぶ。彼ら彼女らのスポーツの祭典だ
▼県内の定通制で学ぶ生徒は3千人余。人間関係のつまずきや経済的理由、過去の問題と事情はさまざまだ。アルバイトや家事をしながら週に何度か学校に通う。部活動は毎夜1時間、週に一度数時間など練習時間が限られる。記録や点数も大事だがそれだけじゃない
▼バドミントン女子団体、子どもの年代の生徒に交じって3位入賞した八重山商工3年の本若いずみさんは「学校って楽しい」。男子団体で大接戦を制した泊通信2年の當間崇智君は「普通に勝っただけでは得られない気持ちになった」。心の中で闘う自分の後ろに、大応援団がいた
▼生徒を見守る泊の有西誠監督は「いろいろ抱えた子もいる。結果以前に体を動かすことで悩みを晴らせる」。別の教諭は相手をずるく攻めきらない教え子のプレーに「優しすぎるね」と苦笑
▼無意識に固定化された高校生の像は解体し、ごつごつとしたふぞろいの豊かさを思い知る。きょうは定通制夏季大会最後の陸上競技、頑張ろう。