<金口木舌>過去の痛み知り平和への一歩を


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 名桜大で先日、講師を頼まれた。活字離れが進む世代に就活や仕事に生かせると新聞の利点を紹介した。経験を伝える難しさを痛感したが、「現場に足を運ぶ」ことを基本にした記事に意義を見いだしたレポートに励まされた

▼歴史を伝えることも難しい。沖縄愛楽園(名護市)でハンセン病について講演した君塚仁彦東京学芸大教授の話に考えさせられた。授業でハンセン病や戦争などをテーマにすると「なぜこんな暗いことを学ぶのか」と拒否反応を示す学生がいるという
▼歴史を直視せず、今とのつながりに対する理解の希薄さから過去を遠ざける傾向が一部にあるのだろう。土地収奪などの過去を無視して政府が進める新基地問題が頭をよぎった
▼名護商工高の平和学習発表会が先週末、名護市民会館であった。「現場を歩く」大切さを語る生徒たちの話が印象に残った。生徒たちは市瀬嵩の収容所跡地で体験者の話を聞き取りした。飢えや不衛生な暮らしなど、戦後も続いた厳しさを初めて知ったという
▼瀬嵩の前に広がる大浦湾では新基地反対を訴える市民を目の当たりにした。「悲しい歴史を繰り返さないため、小さなことから始めたい」。生徒たちの言葉に過去と今が結び付いたことを実感した
▼過去の痛みを理解し、今に生かすことが平和へとつながる。きょうは沖縄戦犠牲者に思いをはせる「慰霊の日」。