<金口木舌>夏を乗り切る先祖の知恵


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 夏の盛り、帰って真っ先に冷蔵庫を開ける子どもたちに、祖母はぬるいお茶を勧めた。不思議なもので、氷水より温かいお茶の方が早く汗が引いた気がする

▼冷たい物の取り過ぎは内臓を冷やして血行を悪くし、体力が落ちる。今、健康番組で盛んに紹介される夏バテ防止法を祖父母たちは実践していた。ゴーヤーなどの夏野菜を食し、食欲が落ちるとゆし豆腐の出番だ
▼豆腐に固める前の煮汁に泳ぐふわふわをそのまま、またはカツオだしで頂く。食通で知られる元毎日新聞論説委員の古波蔵保好さんも“ゆし豆腐支持者”で、庭の赤トウガラシの実を浮かべ「ツルリ、ツルリとノドに通す時の感触と、できたての豆腐の香りがいい-と豆腐好きは礼賛する」と書く
▼連日30度を超し、熱中症も激増している。沖縄では21日までの1週間で57人が救急搬送された。熱中症は、高温多湿で体内の水分や塩分のバランスを崩し、体の中に熱がたまり起こる症状をいう
▼江戸時代には「中暑(ちゅうしょ)」や「霍乱(かくらん)」と呼ばれた。鬼の霍乱とは極めて健康な人が珍しく病気になる例えだが、鬼でもかかるとは油断ならない
▼予防には水分補給や適度な冷房の使用などが欠かせないが、栄養バランスも重要だ。良質なタンパク源である島豆腐や島野菜を取り、「食は薬(クスイムン)」とした先祖の知恵を生かして長い夏を乗り切りたい。