<金口木舌>安保法制の包装紙


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 日本で初めて缶入りのお茶が発売されたのは1985年。なかなか売れず、4年後「缶入り煎茶」という商品名を「おーいお茶」に変えたら大ヒットした。抗菌靴下「フレッシュライフ」も「通勤快足」に改めると、売り上げが激増した。名前の効果は絶大だ

▼こちらの命名はどうだろう。国会で審議中の「国際平和支援法案」と「平和安全法制整備法案」だ。自衛隊が他国の戦争に協力する恒久法なのに、政府は「平和」という包装紙で「戦争ができる国」という本質を覆い隠している
▼だが、偽装工作の魂胆は早々と見透かされてしまった。憲法学者200人超のほか、分野横断の学者6700人超、歴代の内閣法制局長官も違憲と断じる
▼裸の王様に周りが「裸だ」と指摘しているのに、王様は「裸かどうか決めるのは最高裁だ」「半世紀前の判決文には裸と書いていない」と言い張る。異論や批判に耳を傾けず、謙虚さを欠く政権の体質が垣間見える
▼国会会期が9月末まで延長された。「国民に丁寧に説明する」と言っていたはずの安倍首相はこの間、自説をとうとうと述べたり、けむに巻いたりが目立つ。国民の不安、批判に正面から応えていない
▼東京での安保法制反対デモでこんなプラカードが掲げられた。「安倍政権は不安倍(●●)増政権」。核心を突いたこの命名、返上できるか否かは政府の真(しん)摯(し)な対応次第だ。