<金口木舌>熱い夏はこれからだ


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 夏の甲子園出場を懸けた全国高校野球選手権県大会が始まった。シードの興南と糸満を除く60校が参加する1回戦が28日まで行われる

▼野球取材ではスコアブックへの記録記入が必須だ。投打の詳細、進塁の状況などを一球一打、一走ごとに記号で記すのだが、これが面白くも非常に難しい
▼大真面目に書いているつもりで打者が1人ずつ延々とずれる。ささいな1カ所に引っ掛かっている間に次の展開を見逃す。試合後に公式のスコアをもらって自筆と比べると雲泥の差だ
▼スコアは語る。例え結果が同じ2-1でも、息詰まる接戦もあれば、決定打を欠いたぼんやりした結末もある。2チームの記録の積み重ねは千差万別、どれひとつ同じ勝負はない。数字と記号は雄弁に語るが、背景にある選手の心情や体調というのは直接聞くしかない
▼慰霊の日の23日、北谷球場であったコザ-名護は2-1でコザが制した。スコアブックではコザの内間敦也投手の奪三振17も目立つが、名護の當山昇平投手の97球での完投も光った。しかし厳しくも結果は結果
▼「ベンチの3年生の分も勝ちたかった」。當山投手は試合後、自分のせいだと言葉を詰まらせた。彼をさりげなくチームメートが見ている。そんな彼らの空には、真昼の暑気が残る夕方の雲。投球内容を聞くのをうっかり忘れて反省した。熱い夏はまだこれからだ。