<金口木舌>解釈自由な歌の力


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 6月23日の黙とう終了後の発表にこだわったようだ。沖縄出身のロックバンド、モンゴル800が「慰霊の日」に新曲「ひめゆりの詩」を映像付きでホームページ上に公開した

▼取材には応じておらず、込められた思いなどは明らかではない。だが歌詞や映像のメッセージからは二度と同じ過ちを繰り返さないため、沖縄戦の記憶を風化させてはいけないとの思いを強く感じた
▼サザンオールスターズが昨年末の紅白歌合戦で披露した「ピースとハイライト」の歌詞が論議を呼んだ。ネット上では「政権批判」と受け取った人から反発の声が飛び交った
▼歌に勇気づけられたり、救われたりした人も多いだろう。歌や詩の素晴らしさは解釈が自由なところにもある。作者が意図などを明らかにしない限り、解釈の数は無数にあるだろう。だからこそ、一方的に推測した詩の内容を基に作者を公的に批判することはやぼではないか
▼「慰霊の日」の沖縄全戦没者追悼式で与勝高校3年の知念捷君が読み上げた詩「みるく世がやゆら」に心を打たれた。8回繰り返した「平和でしょうか」との問いには、国会で安保関連法案の議論が進む現状に重ね合わせ、考えさせられた
▼自由に解釈して詩を読み込み、作者の意図に思いを巡らすのは楽しい。断言はしない。だが歌や詩が多くの人の心を動かす力を秘めていることは確かだ。