<金口木舌>断絶生む元凶


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 地球の自転速度と原子時計に基づく標準時のずれを埋める「うるう秒」がきょう7月1日に挿入される。午前9時前のわずか1秒。宇宙と原子の間で繰り広げる壮大な帳尻合わせだ

▼コンピューター社会の進展で「うるう秒」は重要視されるようになったが、「100年に1分程度の誤差は日常生活に影響はない」という異論もある。1秒挿入にかける労力は多大で、日米は廃止を主張する
▼4年に一度巡ってくる新暦の「うるう日」は学校で学んだ。旧暦を重んじる人には「うるう月」は生活の一部であろう。沖縄では「うるう月」のある年を「ユンジチ」と呼んでおり、墓造りに良いとされている
▼漢字では「閏(うるう)」と書く。「余分、余計なこと」という字義がある。太陽や星の動き、月の満ち欠けを見詰め、暦と季節のずれを修正する技術を生んだのであろう。先人の知恵に驚く
▼ずれという以上に修復困難な断絶に見えるのは自民党勉強会で飛び交った暴言である。政治家や有名作家がまき散らした誤解と悪意に満ちた沖縄観は事実と懸け離れている。しかも、当人たちにその自覚がない
▼戦争体験に向き合わない。基地の形成過程を知らぬ。基地被害から目を背ける。ゆがんだ沖縄観の元凶である。せめて安倍政権は元凶を絶つ努力をしてはどうか。宇宙や原子を観察する必要はない。沖縄を直視すればよいのだ。