<金口木舌>異質排除の「気持ち悪さ」


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 ジャポニカ学習帳は花や虫の写真が表紙を飾るおなじみのノートだ。3年前、表紙から昆虫が消えた。親や教員から「気持ち悪い」とのクレームが相次いだからだ

▼東京では、子どもの声がうるさいとして保育園への苦情が続出しているという。虫が嫌いなら使わなければいいし、保育園を迷惑施設扱いするのも信じ難い。自分の気に入らないものは排除してしまう傾向が世に強まっている
▼「自分と立場の違う人たちへの共感性が乏しく、寛容さが欠如している」と心理学者の榎本博明さんは著書「『過剰反応』社会の悪夢」で指摘する。物事を単純化せず多面的に見る「認知的複雑性」が低い人は、「好きか嫌いか」「敵か味方か」と極端な評価に陥りがちだ
▼政権政党の議員も売れっ子作家も同じ思考回路なのだろう。自らの価値観に合わないものは徹底的に排除し敵視する。それも事実に基づかない思い込みと偏見で
▼沖縄の新聞を読まずして「ネット上のイメージで偏向と感じた」、事実確認もせず「追悼式の罵声は明らかに動員」とうそぶく。ポツダム宣言も読まずに「戦後レジーム(体制)からの脱却」を声高に叫ぶリーダーが率いるだけに、同じ行動類型なのか
▼自然は、害虫も益虫もいてこそ多様性が保たれる。政界はどうだろう。異論を封じると、同じ色の虫ばかり群れてしまう。それこそ「気持ち悪い」。