<金口木舌>就職戦線異状あり


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 企業が内定を辞退させないように、内定者を高級クラブで接待する。バスツアーで長期拘束し囲い込む。1991年公開の邦画「就職戦線異状なし」の一幕だ

▼「空前の売り手市場」と呼ばれたバブル絶頂期の就職活動を描く。バブル以降に就職した世代には想像もできない。映画は極端だが現在、求人数の回復に伴い「売り手市場」の傾向が鮮明になっているという
▼さらに経団連が指針を変更し、ことしから企業の面接時期を4カ月遅らせたことも状況の変化を生んだ。経団連未加盟の中小企業などは優秀な人材を大手に採られる前に早く内定を出す動きもある。複数内定が出ても就職活動を終えない学生も増えたという
▼「オワハラ」という新語ができた。「就活終われハラスメント」の略で、人事担当者が就職活動中の学生に内定を決めた自社への入社決断を強要する行為を指す。文部科学省が6月公表した調査で、「オワハラ」の相談を受けたという大学は45・1%だった
▼企業にとって内定辞退は打撃となり、避けたい事態だろう。だが将来を決める大事な選択肢の幅を狭めることを、学生に強要してはならない
▼企業はバブル期のように接待でとどめるのではなく、入社したいという学生の意欲を高める努力が必要だ。学生側も本当にやりたい仕事は何かしっかり考えたい。企業の「オワハラ」に人生を左右されないために。