<金口木舌>「台風クラブ」に思うこと


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 気象庁は7日、静止気象衛星ひまわり8号の運用を開始した。世界初となるカラーの気象画像には青い地球に台風9号の巨大な雲海が渦を巻く

▼けが人26人、最大約4万戸超が停電。宮古島でマンゴー早めの出荷、県議会初の会期延長、ピースフルラブ・ロックフェスティバルの中止など影響は各方面に及んだ。辺野古の新基地建設作業と反対住民の座り込みも小休止
▼台風を描いた映画に「台風クラブ」(1985年、相米慎二監督)がある。山を望む街に住む鬱々(うつうつ)とした中学生の日常に台風がやって来て、去るまでの話だ。10代の成長譚(たん)であり、田舎と都会の距離感であり、生と死をめぐる物語である。何十回見たか知れないがまだその意味は分からない
▼昨年まで台風が来るたび取材した。現場ではなく終日社内に缶詰で、台風の位置や被害情報、住民避難や停電、休校や公共交通機関などの生活情報をまとめた
▼1年前の台風8号には気象庁の特別警報が国内で初めて適用された。従来の警報と新設の特別警報、市町村による住民避難勧告のめまぐるしい発表と解除。慣れない事態に住民生活は混乱、業務も大いに戸惑った
▼映画「台風クラブ」では中学生がそれぞれの感覚で台風を感じ、各自のやり方で乗り越えた。もちろん防災が大前提だがこのひととき、人生の小休止を活用して自らの物語を見詰め直してみよう。