<金口木舌>沖縄は祭りのイメージ


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 午後11時ごろ。緩くカーブした坂道を住民が埋め尽くした。体を激しくぶつけ合い、全身全霊の力を込め綱を引く

▼静かな住宅地で繰り広げられる一夜の祭りに心を奪われた。2013年8月、旧暦6月25、26日に合わせて行われる南風原町喜屋武区の綱引きを取材した。まるでけんかのような激しいやりとりや、門中で東西に分かれて争う形態が興味深い
▼喜屋武区の綱引きのように観光化はされていないが、面白い地域独特の祭りは多いだろう。JTBが祭りを見に行きたい国内の旅先を都道府県別に尋ねたアンケートで沖縄は7位に入った
▼1位は青森で京都、北海道と続く。面白いのは、祭りの具体名を挙げる「国内の旅先で訪れた祭りの開催地は」、「訪日旅行者に見て欲しい・参加して欲しいと思う国内の祭りは」との質問で、いずれも沖縄が10位以内に入っていないことだ
▼青森のねぶた祭や京都の祇園(ぎおん)祭のように具体名は分からないものの、エイサーやカチャーシーなどの踊りから祭りの印象が強いということか。祭りのイメージがあるのはいいことだが、逆に言えば具体名を挙げてもらえるようなPRが今後の課題にもなりそうだ
▼祭りには喜屋武区の綱引きのように地域の伝統、文化を継承する側面もあれば、地域を活性化する側面もある。いずれにしても、人と地域を熱くする祭りを楽しまない手はない。