<金口木舌>ペリーの星条旗の呪縛


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 ミズーリ号といえば、アジア・太平洋戦争の降伏調印式が行われた米戦艦だ。1945年9月2日の式典で、米国は2枚の星条旗を掲げた。真珠湾攻撃の際にホワイトハウスに掲げていた旗と、1853年に来航したペリー艦隊の旗だ

▼ミズーリ号の停泊位置にもこだわり、ペリー艦隊と同じ横浜沖の地点にした。力で日本を開国させた原点を、92年たって再び誇示してきた
▼安倍晋三首相にもこだわる原点がある。祖父の岸信介元首相とアイゼンハワー元大統領のツーショット写真を執務室に飾っているという。国民の反対をねじ伏せて安保条約を改定させた祖父を孫は追う
▼今回の安保法案でも首相はこう言った。「祖父は50年たてば理解されると言っていたが、25年、30年で支持は多数になった」。国民よりも米国を優先する体質は受け継がれている
▼集団的自衛権の本質は、米国の戦争にしっぽを振ってついていくこと。2年前「主権回復の日」に固執した人物とは思えないほどの対米隷属ぶりで、属国ここに極まれり、だ
▼憲法を米国の押し付けだというのなら、不平等な地位協定や過重な在沖基地はどうなる。米国にしっかりと物を言えない為政者の追従姿勢こそ変えるべき筆頭だろう。開国から160年余たっても今なお、ペリーの星条旗はこの国の政治家、官僚の思考を呪縛し支配しているのではないか。