<金口木舌>酒は適量で


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 20代のころに聞いた先輩の言葉だ。「酒が強いか、弱いか、幾つになっても分からないよ」。飲めないと思っていた先輩は、飲むたびに酒量の限界が広がったと息巻いた。「一気飲み」はしないよう諭されたが、酒に強くなることをたしなめられた記憶はない

▼県内の男女計約3万人を対象に行われた飲酒調査で、アルコール依存症が疑われる割合が全体の9・5%に上った。全国比では男女とも2倍以上だ。深刻な状況である
▼調査は健康長寿推進復活の取り組みの一環だ。県の年齢別死亡率で肝疾患は男性で全国で最も高く、女性は2番目だ。生活習慣病の発生リスクを抑えるために、一人一人が適度な飲酒を心掛けたい
▼若い世代の依存率も高い。全国では若年層の問題飲酒は減り、沖縄と差が顕著という。幼少時から酒の場に親しむような状況も影響しているのでは、との指摘もある
▼居酒屋に子どもを同席させる。親戚同士の集まり、子どものいる前で大人が酒を楽しむ。飲酒への抵抗感が薄まる状況に子どもを置かないことなどを心掛けたい
▼ストレス解消に飲酒する人も多いというが、アルコール依存症になっては元も子もない。眠れない時の飲酒は逆に睡眠の質を低下させるという。「酒は百薬の長」というが、適量を守ってのこと。何より健康だ。「酒に強い」を「美徳」にしない社会づくりから始めよう。