<金口木舌>自然が育む生き物たち


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 本島北部の静かな山あい。夏祭りの花火の迫力とはひと味違った満天の星空が瞳に広がり、時を忘れそうになる。自然の豊かさはやんばるの魅力そのものだ

▼過日、象徴的な出来事があった。国の特別天然記念物で環境省レッドリスト絶滅危惧1A類のノグチゲラの営巣とひなが名護市内で確認された。過去にも目撃情報はあったが、市内初の正式記録となった
▼1998年以降、保護増殖事業を皮切りにノグチゲラの観察を続ける環境省やんばる自然保護官事務所は「北部3村以外で繁殖環境拡大の可能性がある」と夢が膨らむ。発見した同事業ワーキンググループの渡久地豊さんも「新たなステージに進める」と分析した
▼北部3村と連結しない名護市内の森での営巣確認。戦後焼け野原になった山々の回復と伐採事業が一時期よりも緩やかになったことによる木々の成長も背景にあるようだ
▼というのも直径30センチ余り、木の中が腐朽している状態が最も巣に適しているという。この数十年でこのようなイタジイの木が森の中で生き続け、県鳥の命を育む営巣木となった
▼「森は生き物の命を守るだけでなく、海の環境にもつながる」と渡久地さん。見えにくい自然のサイクルも生き物たちが教えてくれる。巣立ちへ備え、親子連れで活気づく季節。鳥たちの暮らしや自然保護など学びを体感する夏にしてみては。