<金口木舌>誰かの生きづらさに思いを


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 運転免許の更新が迫り、県警免許センターに行った。周囲は、人物像は不明だがほぼ同じ7月生まれの連帯感。講習で居眠りする人に「目立ちすぎ」と視線で合図するも届かなかった

▼老若男女、職業や婚姻、能力、容姿。あらゆる項目に私たちは分類される。否、そこに安易に乗って楽しているだけか。7月生まれという他愛のない区分に妙な親近感を覚えるのはなぜ
▼同性愛や性同一性障害などの性的少数者(LGBT)や支援者が参加するピンクドット沖縄のイベントで那覇市は「性の多様性を尊重する都市・なは宣言」を行った。自治体で全国2例目。少数者の権利擁護もさることながら、皆が生きやすい社会をつくるという当たり前の表明だ
▼沖縄戦から米施政権下、貧困や米軍基地といった諸課題に揺れる現在まで、常に生きた人権問題を闘う沖縄が、生き方の多様性のかじを取るのは歴史の必然か。那覇市の宣言には子どもや女性の人権に長年取り組んできた民間の動きと、呼応した行政の両輪があった
▼大切なのは身の回りで多様性を話し合うことだが、現実は言い出せなかったり、似たような価値観の人と話しがちだったり。それでも社会は少し変わったか
▼男女混合名簿の低い導入率という課題も抱えながら教育現場での取り組みも始まる。誰かの生きづらさは、自分の生きにくさと無縁ではないと思いを馳(は)せよう。