<金口木舌>「復帰男」を送る


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 国頭村の辺戸岬に立つ祖国復帰闘争碑の碑文は「復帰男」コンビが合作した。祖国復帰協議会の3代目会長だった桃原用行さんの文を、6代目事務局長の仲宗根悟さんの文字で刻んだ

▼恩納ナビの歌に着想を得た桃原さんは「吹き渡る風の音に耳を傾けよ」「波濤の響きを聴け」と呼び掛けた。風波の間に聞こえるのは「戦争を拒み平和と人間解放を闘う大衆の雄叫(おたけ)び」と記す。仲宗根さんも同じであろう
▼「人間解放の一里塚を築くことが復帰運動の目的だった」と語った。復帰は到達点でなく新たな運動の起点だ。基地撤去の闘いは続く。復帰の内実に憤りをぶつけた「復帰男」の信条である
▼2005年秋、元毎日新聞記者の西山太吉さんを招いたシンポジウムでの姿が忘れられない。マイクを握り、震える声で「沖縄が何も力になれなかった」と語った。密約報道で逮捕された西山さんへの謝罪だった
▼一里塚を築いてもなお、立ち戻らなければならぬ痛恨事だったのだろう。「人間解放」が果たされぬことへの怒りもあったに違いない。復帰の原点を見詰め続けた仲宗根さんが逝った
▼社会党県本部の書記長だった1990年代の仲宗根さんはこわもてに見え、近寄り難かった。近年、つえを手に集会に参加する姿は、青年運動を率いた若き日を想像させた。辺野古崎に大衆の叫びを聞きながら「復帰男」を送りたい。