<金口木舌>おらが県の先生、わったー島の議員


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 参院の「1票の格差」是正案として合区が提案された今月中旬、高知県で会った人々は複雑な表情だった。「隣県でも高知と徳島は県民性も地域事情も違うが」

▼高知と徳島は明治の一時期、一つの県だった。徳島藩は廃藩置県で県になったものの、政府の大併合政策で1876年、高知県へ編入された。結局、4年弱で再び徳島県が分離したのだが、県議会は高知系と徳島系に分かれ、論戦激しかったと伝えられる
▼国会議員は「全国民を代表する」と憲法はうたう。異論はない。しかし地域の問題を国政の場に訴えるのも議員の役目だろう。もし、一人も国会議員がいなかったら。高知県庁の職員は「陳情でも高知の事情を一から説明することになるのでしょうな」と困惑顔だった
▼しかも今回の10増10減で格差は2・97倍に減ったにすぎない。格差を合区で解消しようとすれば、複数県を1選挙区にするなど拡大させるしかない。沖縄も参院の格差は2・29倍ある
▼連邦制の米国では、上院議員は人口に関係なく各州2人だ。「州の代表」と明確に位置付けられる点は検討に値するのではないか
▼1票の格差をただすのは必要だが、地域の声が届かず、結果、地域格差が生じるのは腑(ふ)に落ちない。「おらが県の先生」や「わったー島の議員」がいない赤じゅうたんは冷え冷えした光景に感じるのだが。