<金口木舌>こども記者の困惑と大人の責務


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 多くの子どもたちが夏休みに地域探索や自由研究を行う。普段と違う学びは成長への一歩になる。9月1日付本紙「こども新聞」に参加するこども記者もこの時期、取材を通して自己を磨く

▼過日、基地問題を取材テーマにした谷川優里さん(東風平小6年)と名護市辺野古を訪れた。市民らが基地建設に抵抗する最前線はどう映るのか、こども記者の視線に興味を持つ一方、日々の取材姿勢を問われているようで身が引き締まった
▼谷川さんは11年間座り込む辺野古漁港のテントやキャンプ・シュワブのゲート前で市民らの思いに触れた。聞き役だった谷川さんが素直な感想を初めて口にしたのは、大浦湾を一望する丘に登った時だった
▼「沖縄の広い海がなぜ浮具で仕切られているの」「小さな島内でなぜ基地を移設し合うの」。真っ青な海への感動は一瞬だった。新基地建設に向けた海上作業に伴い張り巡らされた「規制線」に、表情は曇った
▼市民らの「平和や命の大切さを多くの人と共感したい」との言葉をかみしめていたのだろう。ニュースで見る海上の光景を目の当たりにした11歳の少女は困惑していた
▼広島、長崎への原爆投下と終戦、そして70年後も続く沖縄の基地問題。過去と未来をつなげる手だてを次代へいかに伝えるのか。今を知り、理解する力を育ませよう。夏の一日に大人の責務を思う。