<金口木舌>被爆70年の誓い


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 世界的なバレリーナ森下洋子さんのきゃしゃな姿が5日はピッチャーマウンドにあった。広島カープが原爆投下から70年を前に本拠地で開いた「ピースナイター」で始球式を行った

▼森下さんは祖母も母も被爆した被爆2世だ。祖母は左半身に大やけどを負い、九死に一生を得たが、生涯、手が不自由だった。「海外公演では誰もが『ヒロシマ』を知っていて、平和を考える言葉になっている」と語る
▼沖縄戦の組織的戦闘が終結した6月23日の後も、軍部は本土決戦にこだわった。7月26日には米英中3カ国がポツダム宣言を発表するが、天皇による統治の継続「国体護持」を優先して、受け入れなかった
▼歴史に「もし」は許されないが、原爆投下により8月6日の広島で14万人、9日の長崎で7万4千人の犠牲者が出たことを思うと無念でならない。さらに森下さんの祖母のように多くの人が後遺症に苦しみながら戦後を生きた
▼参院の特別委員会では安保法制の議論が続く。安倍晋三首相は衆院とは作戦を変え、北朝鮮や中国を名指しして脅威論を訴える。軍備に軍備で対抗しようとすれば核という最終兵器を手にするしかない
▼広島市の平和記念公園にある原爆死没者の慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれる。その誓いが守られるか。瞑目(めいもく)して、戦後70年の夏を思いたい。