<金口木舌>ヒロシマ、ナガサキ、オキナワ


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 「広島をまどうてくれ(元通りにして)」。被爆70年を迎えた広島の平和記念式典で松井一実市長は、身も心も元通りにしてほしいという被爆者の悲痛な叫びを広島弁で訴えた

▼市長に続いてあいさつに立った安倍晋三首相には「戦争法案反対」などのヤジが飛んだ。被爆者の遺族によると、慰霊式でこれまでヤジが飛ぶことはなかったという
▼この日は広島市内の各所でも慰霊祭があり、学校ごとの慰霊碑でも行われた。都市防衛のための空き地づくりで住宅地を壊して撤去する「建物疎開」に動員されていた学童も大勢が原爆で亡くなった。学徒動員され犠牲になった沖縄の状況とも重なる
▼広島には二つの顔がある。世界で初の被爆地の顔を持つ被爆都市「ヒロシマ」と、侵略戦争の拠点にされた「廣島」だ。日清戦争から海外出征軍基地として整備され、一時は広島城に大本営が移され、明治天皇が作戦を進めた
▼原爆投下の標的として選ばれた理由の一つに、広島に陸軍司令部があり重要な補給基地だったことも指摘されている。沖縄戦で教訓となっている「軍事基地は標的になる」は、広島でも同じだ
▼原爆被害や平和を語るとき広島は「ヒロシマ」となる。「カタカナの/ヒロシマの文字/胸を刺す」。被爆者の遺族が詠んだ詩を前に、あらためてヒロシマ、ナガサキ、オキナワを思い、不戦を誓う。