<金口木舌>地域再生への英知


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 鹿児島県大隅半島にある鹿屋市の柳谷(やなぎだに)は通称「やねだん」という。この集落が全国から注目されるようになったのは、行政に頼らない自主自立の地域再生の範を示したことにある

▼自治会が借り上げた休耕地で高齢者や子どもがサツマイモを栽培し、土着菌を応用した地力回復剤も製造・販売する。増産につながったサツマイモは焼酎に。住民協働で毎年、自主財源200万円を生み出す
▼活動が実を結ぶまでには苦労も多かった。柳谷自治公民館長を19年間務める豊重哲郎さん(74)が7日、うるま市平安座島で開かれた講演会で振り返った。「無視、反目者も必ずいる。それでも地域活動で絶対に犠牲者は出さない。忍耐、我慢力が要る」
▼人口は1996年3月時点で約300人、高齢化率も高く「自主財源なし、笑いなし、夢も希望もなし」だった。豊重さんは唯一の資源は「人」とし、冷えかけた人間関係を温め直すことから始めた
▼農作業に子どもを参加させるのは、経費圧縮以前に高齢者を誘う仕掛けだ。2014年9月現在の人口は263人に減ったが、地域の活力は段違い
▼講演会を開いた平安座自治会も人口減など同じ課題を抱える。だが島に魅力を感じ、芸術や地域資源を使った手仕事で生計を立てる世代も現れている。柳谷の再生は、そんな萌芽が再生への英知と地力を秘めていることを教える。